みんなもっと自分のこと、全肯定しなあかん!
『大阪ハムレット』
原作は、あの「少年アシベ」を描いた
森下裕美のオムニバス短編集。
もちろんマンガです。
しかも、第10回文化庁メディア芸術祭優秀賞と
第11回手塚治虫文化賞短編賞を受賞した、とっても評価されている作品。
お話をざくっとまとめると…
大阪の下町で暮らす久保家は、お母ちゃんが3人の息子を育てている。
お父ちゃんは突然亡くなって、四十九日もすまないうちに
お父ちゃんの弟と名乗るおじちゃんが転がり込んできて、
お母ちゃんはすんなりその人を受け入れた。
…だから今は5人で暮らしている。
長男・政司は中3なのに、見た目は大学生みたいに老けてる。
だから年齢を偽って大学生と恋人に。
でもその彼女が「私のお父ちゃんになって!」と甘えてきたり
教育実習生として自分の学校にやって来たりするから、もう大変!
(彼女役は加藤夏希ちゃん。天然っぷりがとっても◎)
やんちゃな中1の次男・行雄は、学校で担任から
「久保くんはハムレットやなあ」と言われて
「ワシは山本さんちのハムスターとちゃうわい!」と激高。
が、それがシェイクスピアのハムレットのこととわかると
図書館でハムレットを借りて辞書を引きながら読み始める。
すると
「ハムレットのお父ちゃんの弟が
兄ちゃんを殺して、お母ちゃんをたらし込んで王様になった」と知って
「ワシの家も同じや言うんかい!」と、さらに怒り心頭。
ところが同時に自分の顔がお父ちゃんに似てないことや、
お母ちゃんの妊娠を知って
「自分は何者か? 人生とは?」と真剣に悩み出す…。
三男・宏基は小学生。
ある日、みんなの前で
「女の子になりたい。真剣やから、みんな笑わんといてください!」
と宣言するも、みんなにからかわれてしまう。
そんなとき、なぐさめてくれたのはお母ちゃんの妹の亜紀。
ところが病気で入院中の彼女は、ほどなくして他界してしまう。
しばらくして学芸会が催されることになり、演目は「シンデレラ」。
周囲に推薦され、シンデレラを演じることになった宏基。
大好きだった亜紀の服を
お母ちゃんに仕立て直してもらって衣装にするも
理解してくれない人たちに冷やかされて、心が折れそうに…。
そんないろいろありすぎる久保家の面々が
みんなそろって宏基の学芸会へ。
それぞれに抱える、それぞれの悩みはどうなるのか?
というのが話の筋なのですが…
最後の学芸会、めっちゃ泣けます! とだけ言っておきますね(笑)
とにかくね
悩んでもがいて奮闘する3兄弟が、いいんです。
みんなめっちゃ不器用なんだけど
逃げないで頑張って考えて行動して。
抱えてる悩みは、もちろん3兄弟と違うけど
「わたしもちゃんと悩みに向き合って、解決していかなあかん!」
と思わされます。勉強させてくれます、3兄弟!
だって、あんなにちゃんと悩んでる姿って…健気。
とくに次男の
「あー、もう漢字ばっかしでわからんわ!」と言いつつも
辞書を片手に、朝までかかってハムレットを読破してしまう姿…。
この一生懸命力が、たまりません。
しかも、そこからしっかり人生を学んでるしね。
演じてる森田直幸クン、最高です。
そして、お母ちゃんとお父ちゃんも最高!
お母ちゃん役は松坂慶子さん。
どーんなこともしっかり受け止めて
笑い飛ばせる明るいお母ちゃん役が、ぴったり。
彼女のあのボリューミーな体型がいいんですよね。
ふくよかで大らかで
母性のかたまりというか、もう女神チックです。
彼女の明るくてやわらかな存在に、
観ているこっちまで
「悩みごともあるけど、なんか大丈夫そう!」と思わされます。
あんなにきれいやのに、元気もくれる女優さんですよね。
お父ちゃん役は、岸部一徳さん。適役!!
最後まで
「この人、おじちゃん? 何者??」と思わせる
ひょうひょうとした感じが、かわいくて不気味(笑)
でも何だか憎めないあたり、さすが一徳さんです。
そんな核となる久保家の5人に加えて、
映画の中に出てくる人間がみーんな
やんちゃやけど、絶対やさしい
チャラけてるふうやけど、すごくマジメ なのです。
いつだって何に対しても愛情たっぷりなんですよね。
だから、言う言葉がいちいち心に響きます。
気持ちがちゃんと入ってるから。
そして、この映画の最大のメッセージである
「人生いろいろあるけど、生きとったら、それでええやん」
ということを、登場人物たちを見てたら自然と感じられます。
あと「自分のこと、もっと全肯定してあげなあかんよ!」
っていうメッセージも受け取れました。
素直に今の自分を受け入れて
不器用でもいいから、こつこつ頑張るんやで〜みたいな。
ほんと、人生そうしていかないとね!
で、原作も読んでみました。
「少年アシベ」みたいなかわいさはないんですけど、
日常の中の「大人もこどもも、みんな生きるの大変なんやなあ」
っていうリアルさが、ひしひしと伝わってきます。
もちろん「生きとったら、それでええねん」っていう
とてつもなくでっかいメッセージも!
で、どのお話も相当に深いです。
人間が体験しないといけないこと、味わうべき感情がどばーっと。
読んでたら、笑えます! 泣けます! 元気出ます!
ぜひぜひ映画とともに、原作も読んでみてください。
あと、ちょいとこぼれ話。
この作品の舞台挨拶には行けなかったのですが
宣伝会社の方に聞いたところによると、
松坂さんと3兄弟役の子がそろったらしいんですね。
撮影中も3兄弟役の子たちは
ほんとの兄弟みたいに仲がよかったみたいだし、
松坂さんとも、ほんとの親子みたいだったそうで
とくに三男役の子は、すごーく松坂さんになついてたらしいのです。
で、舞台挨拶が終わるとき
「もう松坂さんに会えない!」と思ったその子は
松坂さんの胸に抱かれて泣きじゃくっていたそうです。
なんとも心あたたまるお話。
…ていうか、わたしも松坂さんの胸に抱かれてみたい〜。
ふわふわしてそうで
めっちゃ癒されそうですもんね♥
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